戦地の隣国(100日目)

 各所で報道されていますが、ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めて100日を超えました。まだ100日しかたっていないのか・・・と思うほどこの3か月超は気が重かったですが、湾岸戦争イラク戦争で半年、ちょっと昔の第二次世界大戦の欧州戦線は6年間弱も続きましたからね。戦争自体が高速化しているとはいえ、近代国家間のぶつかり合いですし、まだまだ戦いは続くでしょう。

 さて、今まで「戦地の隣国」「戦地の隣国の変化」という2本のブログを書いてきましたが、100日目の節目ということで、本日は100日たった戦地の隣国について書いていきたいと思います。

1.難民の流れの変化

 当初、スロバキアにも多く来ていた難民ですが、最近ではウクライナからスロバキア流入する人よりもスロバキアからウクライナ流入する人の方が多い日も増えてきました。つまり、戦争継続中にもかかわらずウクライナへ戻る人、帰る人が増えているということです。

 実は、今回の難民は従来のシリア紛争などで発生した従来型の難民と違う点が多くあります。まず、現在ウクライナでは戒厳令と総動員令が出ておりますので、一部例外を除き18~60歳以上の男性は出国が不可能です。そのため、以前のブログで書いたとおり難民として避難してくるのは女・子供ばかりでした。つまり、そうして避難してきた人の多くはまだウクライナに男家族が住んでいるわけです。一家総出での避難ならともかく、家族がまだ自宅に住んでいるのでしたら、ある程度の安全が確保されたと判断されうる状況になれば元の家に戻るのは当然の流れと言えます。

 また、現在ロシア軍は開戦当初の全面侵攻から作戦を変え、東部地域を中心とした展開に切り替わったこともあり、首都近郊及びウクライナ西部地域では侵攻の危険性が相対的に下がりました。その結果、当該地域のウクライナ人がどんどん戻れると判断できる状況になったのも帰国者が増えた要因の一つです。そのため、当初懸念されていた膨大な難民の流入による社会不安の増大というものは、少なくともスロバキア内ではあまり見られませんでした。

 実際、最近のスロバキアでは中央駅に設置していた難民対応センターの閉鎖、難民のための一時滞在施設も少しづつ縮小され、継続的なスロバキア滞在を望んだ一部の人たちをより手厚く見るようになり、支援の方法も変わってきています。

2.兵器供与

 開戦後から、アメリカ・NATOを中心にウクライナへ大量の武器・軍事支援が供与されています。当初は各国の武器供与についてロシアに及び腰であったためか対戦車砲ジャベリンや防弾チョッキなどの軽装備を中心とした供与でしたが、最近では戦車、榴弾砲などの重兵器と言われる大型兵器の供与へと変化してきております。

 スロバキアも小国ながら本戦争に係るウクライナへの軍事支援を続けており、先日「ズザナ2」という名前のスロバキア榴弾砲ウクライナへ有償供与する契約を締結いたしました。

 上記はスロバキアのナジ国防相のツイートです。ちなみに、ズザナというのはスロバキアで最も一般的な女性の名前でして、実は現大統領も「ズザナ・チャプトヴァー」と言います。

3.ガソリン価格の上昇

 日本でもガソリンの価格は上がっていると思いますが、はっきり言います。こっちのガソリン価格の上がり方は比ではありません。

 昨日近所のガソリンスタンドで価格を見たときは、ガソリン・ディーゼルともに1L=1.8€≒252円を超えていました。当初、この国に来た時ディーゼルは1€切ってたんですが、途方もない上がり方です。日本は1L=170円程度でガタガタ言うんじゃない。

 実はスロバキアのロシアへの石油依存度は約100%、つまり原油のほぼ全部がロシア産であるので、ロシアに生殺与奪の権をがっつり握られています。こんなにがっつり上がっちゃったのもその影響なんですかねぇ。

www.jiji.com

 あとご存じの方もいるかもしれませんが、先日、EUがロシア石油禁輸の制裁措置を発表されました。ロシア依存度100%のスロバキアは石油エネルギーどうするのってわけです。

 ただ、スロバキアに供給される石油は全てパイプラインを使い陸路で供給されるのと、この制裁では「海上輸送の石油のみ」が対象でパイプライン経由の石油は制裁措置の例外となっているので、ひとまずスロバキアへの石油の供給はまだ維持されるようです。とはいえ、いつロシアが石油止めてくるか分からんですからね。

4.世の中のウクライナへの関心

 先日、開戦から100日たって、徐々に世界中のウクライナ関連情報が減ってきている=世界のウクライナへの興味関心が薄れてきているという分析結果が出ました。

www.axios.com

 まぁこれについてはある種のやむを得ないことなのかもしれません。人間には「忘却」という機能があり、どんどん記憶というのは薄れていく生き物ですし、情報過多で次々と話題が移る現代社会にあっては、興味関心の低下は必然と言えるでしょう。

 スロバキアも例外ではなく、仕事柄毎日現地ニュースをチェックしている身ですが、やはりウクライナ関連ニュースは開戦当初と比べれば落ち着きつつあるのは事実です。ただ、現地の人々の関心が完全に失せたわけではなく、本日も旧市街広場にてウクライナのためのデモが行われていました。

 まだまだウクライナでは悲惨な状況が続いており、一刻も早く戦争が終わることを祈るばかりです。しかしながら、現状での戦争終結は仕掛けた側であるロシアを利するだけであり、国際社会はウクライナが「戦う」と言っている以上、関心を失うことなく軍事・人道両面での支援を行っていく必要があると思います。