ロシア・ウクライナ国境緊張問題

※本記事は1月23日時点のメディア公開情報を元に書いています。今後の情勢の変動によってはどのように変わるかは分からないものである、という前提でお読みください。

 

今現在の国際社会下では「ロシア軍がウクライナ国境近くに大量展開し、米国含む北大西洋条約機構NATO)と一触即発状態にある。」というのがトップニュースとなっています。

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東欧は東アジアからはるか離れた地域であるため、日本国内だと当問題はそこまで興味・関心は高くないようですが、世界的には米露という伝統的東西対立が相当に表面化していること、何より今私が住んでいるスロバキアウクライナと国境を接しており、隣国で戦争になるかもしれないという状態なので、この地域ではとても大きな関心事項となっています。

もっとも、「そもそも何でロシアは軍隊動かすの?どうしてウクライナとロシアは揉めているの?NATOがどう関係してるん?前にもウクライナとロシアって戦ったよね?」など日本人からすると疑問点が多いと思われますので、簡潔ですが解説いたします。

1.ロシアの要求は何か

今回ロシアがウクライナ国境付近に大規模部隊(報道によれば10万人程度)を展開していますが、ロシア側の要求は「これ以上NATOを拡大させないことをNATOが約束すること」です。

まず、NATOについてものすごく軽ーく説明しますと、NATOは東西冷戦時代に設立された西欧諸国の軍事同盟のことで、対抗軸としてワルシャワ条約機構がありました。ただ、その後にソ連及びワルシャワ条約機構が崩壊した後もこの軍事同盟は存続し、加盟国もどんどん増加。それどころかかつて東側陣営だった国(バルト三国ポーランドチェコスロバキアハンガリールーマニア等々)もNATOに加盟するなど、西側軍事同盟は東へ伸びていきました。

この動きに対して大変気に食わないのが、ソ連崩壊後の混乱から国を建て直し、再びロシアを強国にしたいという野望を持つプーチンです。プーチンは「NATOの東方への拡大はロシアの安全保障に危機をもたらす」という主張を展開し、再三にわたり警告しておりました。そして、ついに2021年末にNATO不拡大を求めて、ウクライナ・ロシア国境に軍を駐留し、不拡大を要求するという強硬策に出たわけです。

2.どうしてロシアは「NATO不拡大の保証」をウクライナ国境への軍駐留とセットで要求してきたの?

実は、近年のウクライナEU・NATOなどの西側陣営への接近政策を進めており、NATO側も「ウクライナNATOへの加盟希望国」であることを認めています。ところが、ウクライナNATOに加盟することは、「ロシアの安全保障上絶対に容認ができないラインである」プーチンは主張しております。そのために、わざわざロシアはウクライナ国境付近に軍事力を展開してでも「NATO不拡大の保証」を要求する=ウクライナNATOに加盟できなくすることを目指しています。また、このNATO不拡大は口約束ではなく「条約」という明文規定しろ、と強気の要求をしてきており、さすがにこの要求はNATOサイドも受け入れらないため、なかなか解決しない状況となってしまいました。

3.どうしてウクライナとロシア間で揉めてるの?

まずロシアとウクライナの対立を紐解くうえではウクライナの国内で起こったことを説明する必要があります。これも真面目にやるとものすごく長くなるのでざっくりやります。

ウクライナですが、2014年に革命がおきまして親ロシア派の大統領がロシアへ亡命しました。ただし、ウクライナ東部の一部地域は親ロシア派+ロシア人が多数住んでおり、言語もウクライナ語よりロシア語の方が通じるレベルでありまして、首都で起きた革命に反発。そこにロシアが軍事介入し、クリミアを占領。2022年現在クリミア半島はロシアが実効支配する地域となってしまっております。なお、この領土侵犯について日本含む西洋諸国は承認しておりません。

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当然、領土の一部を軍事介入で引き裂かれたウクライナ側としては納得できるわけがなく、ロシア・ウクライナの対立は深まった状況のまま今に至るというわけです。

4.ロシア・ウクライナ国境沿いで戦争が起きたらスロバキアは大丈夫なのか

もちろん戦争にならないに越したことはないですし、一市民として勃発しないことを願うばかりので、仮定の話であるという上で申し上げます。

まず、私が住んでいるブラチスラバというのはスロバキアの最も西側、ウクライナから離れた場所にある街であるため、いきなりそこまで戦線が拡大してくることは考えにくいです。また、ウクライナもそれなりに広大な国土がありますので、現在ロシア軍が駐留しているウクライナ東部国境付近からウクライナ西部のスロバキア国境沿いまで戦火が一気に広がる可能性は低いです。

しかし、スロバキアは隣国でありますので、どれだけの規模であれ戦闘行為が起きますと、必ずウクライナからの避難民が発生します。加えて、現在はコロナ禍。平時以上に入国には慎重にならざるを得ない状況ですし、その後の避難民の人道支援も必要なので、こうした混乱が国内の至るところで起きてしまうことが考えられます。また、直接的な戦闘被害はなくとも、東欧地域自体が不安定であるという印象が出てしまい、物流等色々な混乱も生じることは予測されます。

つまり、何がどうなるか分からないけど、とりあえず生活上混乱が生じることは間違いないので、戦争回避のために当事者の皆様には良き判断をしていただきたい、と念じるばかりです。

上記解説事項については、下記のBBCニュースが参考になります。

www.bbc.com