ポーランドのウクライナ・ロシア戦争

 実は先週、仕事でポーランドワルシャワに1週間ほど出張しておりました。仕事で行っていたのであまりゆっくりはできませんでしたが、今回はポーランドワルシャワについて書いていきたいと思います。

 まず、ポーランドはロシアによるウクライナ侵攻によって発生した避難民の最大の受け入れ先でありまして、9日時点で250万人を上回る避難民を受入しています。ポーランドの人口は約4000万人であり、そこに1か月でこれだけの人が押し寄せるという状況で、相当の社会的負荷がかかっております。

 ただ、ポーランドではこの異次元規模の難民受け入れについては、政府・民間ともにかなり肯定的であります。実際、街中ではスロバキアとは比にならないくらいにウクライナ国旗を目にする機会が多いです。

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ベランダに掲げられたウクライナ国旗

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公共交通機関にもウクライナ国旗がついています

 ポーランド政府は、移民の受け入れやウクライナへの人道・軍事支援に限らず、今回のロシアの侵略後のEU諸国内のフランスやドイツに対し、「ロシアへの制裁が甘い」と批判するなど、ロシアへの厳しさが際立っております。これには主に2つの要因があります。

歴史的に反ロシアである

 ポーランドは歴史的な流れから、伝統的に反ロシア感情が高い国家であります。ポーランドは古来よりロシアを中心に成立した国家と長らく争う関係が続いておりました。その中でも特に反ロ感情が高まった出来事は第二次世界大戦に起きたナチスドイツと旧ソ連による「ポーランド分割」や旧ソ連軍による「カチンの森虐殺(ポーランド人の大量虐殺)」、「ワルシャワ蜂起時の旧ソ連の裏切り」などがあり、これによって国土は荒廃しました。さらにその後も共産主義陣営としてソ連には苦しめられ続けたため、2022年になっても未だに根強い反ロシア感情を持つ風潮があります。

ロシアの「次の侵略先」であると感じている

 地政学上、ロシアがウクライナへの侵略を完了した暁には、次の侵略先として上がるのが、バルト三国ポーランドであります。ポーランドはロシアの実質的衛星国であるベラルーシと国境を接しており、ロシアの軍事的脅威への警戒感が他のヨーロッパ諸国と比べても高く、実際にNATO軍もポーランド内に常駐しています。

 また、他の要素としてワルシャワ「侵略され、破壊された」経験が色濃く残っている街であることが言えます。ワルシャワ市街地は1980年に世界遺産登録されたのですが、実はこの都市はナチスドイツの侵略により一度完全に破壊された歴史があります。しかし、大戦後に「ヒビの一つまで完全に再現する」という市民のすさまじい努力により、かつての形を完全に取り戻した形で街は修復されました。世界遺産は古来より残っているものが重要視される傾向にありますが、このような復元した市街地が世界遺産として登録されているというのは、この市民の復興に対する並々ならぬ熱意が評価されたためと言われています。

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復元されたワルシャワ旧市街。行った日は4月なのに雪が降っていました。

 今回の戦争により、多くのウクライナ人が故郷を追われ、住んでいた土地をロシア軍により破壊されております。ポーランド人としては、元々反感を持っていた国が引き起こした惨事であること、かつて自分たちも同じ目に遭った記憶というものがまだ鮮明にあることから、今回のウクライナ避難民の境遇を他人事と思えないのです。

 コロナも落ち着かない中、さらに戦争もあってかなかなかヨーロッパへ旅行するのはハードルが高い昨今ですが、ぜひ自由に旅行ができるようになった暁にはポーランドワルシャワへ行ってみてはどうでしょうか。