スロバキア人の対ロシア感情について

 以前、「ロシア・ウクライナ国境緊張問題」というブログ記事を書きましたが、あれから1か月がたったにもかかわらずロシア・ウクライナの緊張は解けていないどころか、日々悪化をしております。報道でも毎日悲観的な情報が飛び交っておりますところ、繰り返しになりますが早く緊張が緩和することを願うばかりです。

 さて、今回はタイトルにあるとおり、私がいる国に住むスロバキア人がロシアに対していかなる感情を持っているのか、について話していきたいと思います。なお、あらかじめ申し上げますが、本記事では「〇〇人はXXである」というステレオタイプを書くものではなく、あくまで「こう思う人がいる、こう感じるに至る素地がこの国にはある」ということを、その国の民族・歴史・経済的事情から説明するものとなります。

 まず、スロバキア人の対ロシア感情ですが、現在世論調査をすると「ロシアに対して好意的である人が一定数以上いる」という結果が出る傾向にあります。これについては、主に3つの点が要因として挙げられます。

1.民族的近似

 スロバキア人とロシア人はともにスラブ系民族であり、民族という単位で見ると相似しています。こちらについては、当ブログで昔「チェコスロバキアが独立を志せば、富山の主婦が暴動を起こす」という記事内でも書かせていただいたとおり、民族的に近いことからロシアとスロバキア第一次世界大戦で協力をしたこともありました。そのため、双方に親近感を抱く素地が昔から作られてきました。

2.第二次世界大戦での旧ソ連によるスロバキアの解放

 第二次世界大戦時、スロバキアナチスドイツによる傀儡政権の樹立という実質的な占領を受けておりました。その後、ナチスドイツが敗色濃厚となり、西に反撃を開始した旧ソ連軍によって最終的にスロバキアファシズム政権から解放されることになります。日本でもそうですが、第二次世界大戦の影響というのは現在のスロバキアでも色濃く残っており、ソ連=ロシアは「スロバキアの解放者」として、好意的に見る傾向があります。

 半年ほど前、スロバキアの地方を車で旅行した際、ソ連軍の侵攻で解放された村をたまたま通りかかりまして、そこには当時使われた兵器や銃などと合わせて、旧ソ連軍の活躍によるスロバキア解放を説明する小さい資料館がありました。こうした歴史的資料館は、スロバキア各地にあったりするそうです。

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有名なロシア製自動小銃、AK-47

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資料館の庭に飾られた自走砲

3.エネルギーのロシア依存

 スロバキアで使用されているエネルギーのうち、石油・天然ガス原子力発電用の燃料棒など元となる一次エネルギーはほぼ全てロシアからの輸入です。そのため、ロシアとの経済取引額も決して少なくはなく、またロシアとの対立はエネルギー自給の危機を危惧する声もあってか、ロシアとの対立悪化に懸念を示す人もいるのが実情です。

 こういった民族・歴史・経済的観点から、スロバキアには一定層にロシアへの好意的感情が存在します。

 ただ、冒頭申し上げたとおり、「〇〇人はXXである」といったステレオタイプのように、その国の人々を一言で簡単に断じれることは決してありません。実際、上記した対ロシア感情が良好な人は、世代間で分けると高齢者であればあるほど多い=高齢者ほどロシアに好意的である、という傾向が出ます。逆に、40代以下若年になればなるほど西欧・米の西側諸国に親近感を抱く人が増えていきま。これは、東西冷戦の壁崩壊以降の西欧文化流入やEU加盟、学校現場での英語・ドイツ語の普及によって、ある世代を境に西側社会への親近感が一気に増すためです。実際、現在のスロバキアEU及びNATOのメンバーであるため、米・西欧を始めとする西側諸国と同調する方針なのですが、一方で国内には「この対立は米国・NATOが原因である」と主張する親ロシア的な層がいるのも事実であり、これが国内の政治的対立を生む要因にもなっています。