ホテル・キエフ

 ロシアによるウクライナ侵略からもう1か月たちました。予想に反するウクライナ側の大健闘もあり、当初は数日で落ちると言われていた首都キエフは未だに陥落しておりません。そして、今日はそんな「キエフ」の話をします。

 ブラチスラバの中心部には、かつて「ホテル・キエフ」という名前のホテルがありました。ただ、過去形にもしたように、このホテルは2011年に閉業しております。しかしながら、建物自体は取り壊されず、今もそのまま残されています。

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 このホテルはチェコスロバキア時代の1973年に開業しまして、ブラチスラバ旧市街区域の中ではいまだに一番高い建築物です。当時はKGB旧ソ連のスパイ組織)の事務所もホテル内にあったとかなかったとか言われています。

 しかし、冷戦崩壊以降に資本主義の波が押し寄せると、外資の参入もあってか他のホテルとの競争に勝てなくなり業績が悪化。最終盤は首都一等地にある歴史あるホテルなのに中の雰囲気は暗く、バックパッカーしか泊まらないような安宿と化していたらしいです。最近では再開発の計画が上がったりしたようですが、2022年現在も建物はそのまま放置され続け、現在に至っております。かろうじて、地下のキャバレーのような飲食店は新しい所有者が改装してやっているようですが、まだそこには行けておりません。なんか異国のキャバレーって雰囲気が怖くて入りにくくてですね。

 さて、このホテル、目を引くのはビルに描かれている真ん中の大きな円ですが、実はこの円は2018年にSlovakia Street Art Festivalで描かれたものです。ホテル閉業以降、ホテルの管理が行き届かず見た目がみすぼらしくなり都市の景観を損なっている、と言われていたためなんと窓にそのままスプレー缶で塗装するダイナミックは方式でビルに円を描いたのです。その時の制作風景はアート作品としてメイキング動画になっています。

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 また、このホテルは、著名デザイナーのアルネ・ヤコブセンが手掛けたデンマークコペンハーゲンにある有名ホテル「ラディソンSASロイヤルホテル」と酷似していると指摘されています。

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左がラディソンSASロイヤルホテル、右がホテル・キエフ

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ラディソンの方は1960年開業なので、そちらの方が先です

 ちなみに、外装だけではなく内装の階段もそっくりらしいです。

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ホテル・キエフの階段。なんか暗い・・・

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ラディソンSASロイヤルホテルの階段。こちらは開放感ありますね

写真の引用元:

FOTO: Hotel Kyjev má v Kodani svoju „dvojičku“. Presvedčte sa sami! 

 色々調べてみましたが、ホテル・キエフアルネ・ヤコブセンに関りがあったのかはよく分かりませんでした。まさかデザインをパクった・・・?ホテル・キエフにはもう入れないため、今となっては真実は分かりません。 
 余談ですが、侵略以後、このホテルの頂上にはウクライナ国旗がなびくようになりました。首都の方のキエフもこのホテル・キエフも、早く穏便な形で決着がつくと良いなと思うばかりです。

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照明に照らされたウクライナ国旗