中東欧地域の頭脳流出の話

皆様こんにちは。

 今日はタイトルにある「頭脳流出」という話をしようかと思います。

 そもそも、頭脳流出ってなんぞや、ということですが、ざっくりいうと「移動の自由が認められる世界では、優秀な人材ほどもっと就労・住環境条件が良い国に出て行ってしまい、自国に優秀な人的リソースが枯渇していく」現象のことです。

 ここでいう頭脳、というのは単に学者や研究者だけを指すのではなく、医者・や弁護士・会計士などの士業、ITエンジニアなどの高等教育を必要とする職業の人間も含まれます。

詳しい情報は下記wikiを参照ください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E8%84%B3%E6%B5%81%E5%87%BA

 この辺、日本でもバブル以後に製造業を支えた優秀な企業研究者が中・韓に引き抜かれて日の丸製造業凋落の原因となっただの、日本のポスドク問題は他国と比べても深刻だの、最近ではアニメ市場・ゲーム市場で中華資本が隆盛し、日本の敏腕アニメーターやクリエーターが次々に中国に抜かれているだの、ナショナリスティックめいた煽りも添えられる話になったりします。が、中東欧が抱える頭脳流出の深刻さは日本のそれとは比になりません。

 まず、私がいるスロバキアEU加盟国ですが、EU加盟国ながらその賃金は旧西側諸国(ドイツ・オーストリア以西)の約7~8割程度と言われています。ちなみに、これでも2009年のユーロ導入後に加速度的に平均給与は跳ね上がったものの、いまだに西側より給与水準は劣っておるわけです。

 また、こちらで暮らしていると日常的に英語のみならず、フランス語・ドイツ語で書かれた製品というのを手にする機会は非常に多く、ネイティブ以外の言語に触れる機会は日本人のそれよりはるかに多いです。実際、街中でも40代以下の店員はほぼ英語ができますので、現地言語をあまり覚えようとせずに暮らす私のような不躾なガイジンも大変助かっています。

 加えて、EU域内のシェンゲン協定補正もあり、移動の障壁というのは海に囲まれた島国日本国民と比べるとものすごく低いです。

 そんなわけで、ある程度の教育水準を受けた学生が、より良い生活・より良い待遇を求めて西へ向かうというのは当然の選択になるわけでして、この若者のこの流れはそう易々と止めることはできません。早い話、今の日本で起きている若者の東京一極集中が国境をまたいで行われているということです。

 参考に、スロバキアという国は人口が500万いるのですが、一番在外スロバキア人が多い国はイギリスでして、その数は約10万人と言われています。つまりは、国民の2%が海外にいる状態であって、日本に例えれば、人口1億2000万のうち240万人、名古屋市より多い人口がアメリカに住んでいると思ってもらえればOKです(ちなみに現在の在米邦人は約万人)。この10万人が全員高度人材、とは言いませんがいかに人的リソースが外に流出しているかということを表している数字であります。ちなみに、クリスマスシーズンにはこうした在外に住んでいるスロバキア人の若者たちが故郷であるスロバキアに帰ってくるようで、日本の年末年始の帰省ラッシュと似た現象が起きます。

 こんな難儀な状況の中東欧諸国なのですが、さらに恐ろしいことにヨーロッパ全体というより大きな視点で見ると、高度人材は流出超過である、と言われています。すでに相当西欧に吸い取られているはずなのに、その西欧すらさらにアメリカやカナダ等に吸い取られているっていうのはなかなかに厳しい現実と言わざるを得ません。