実際のところ、欧州のバカンスカルチャーってどうしているの

 日本の夏休みも後半戦。お盆も過ぎ、甲子園も佳境ということでいよいよ夏の終わりが感じられる頃かと思います(と言っても、最近は猛暑のせいかまだまだ夏の終わりを気候から読み取るには程遠いようですが)。

 さて、本日は欧州のバカンスについて書いていこうかと思います。

欧州人のバカンスは長いって本当?

 欧州における「バカンスシーズン」は大体6月~8月ぐらいを指します。国にもよるのですが、欧州の学校は6~8月が完全にお休みになるところが多いので、この時期は労働者・経営者問わず長期間の休みを取るというわけです。

 どれくらいの休みを取るのかは国や企業の風土によって変わりますが、一般論でいくと大体2~3週間が多いと言われています。実際、私の職場の現地職員も2週間の夏休みを取られる方が多いです。

2週間以上の長期休みなんてどうやって取るの?

 日本的な労働感覚だと、2週間以上も休みを取ったら仕事に支障をきたすのでそんなことはできない、という考えの方が多いかと思いです。では、こちらの人々がどうやって長期間のバカンスを取るかと言いますと、大体4~5月くらいになると職員間でいつバカンスを取るかの調整が始まります。バカンスがかぶって職場に誰もいない状況が発生しないよう、バカンスをお互いにずらしながら取得するというわけです。また、同時に業務の共有・引継ぎも随時行い、担当者が長期に不在であっても職場が回るように長い時間をかけて準備します。

実際にバカンスを長期間取って仕事が回るの?

 そして待ちに待った夏シーズン到来。各々、長期間準備をし入れ替わりバカンスを楽しみつつ、職場は機能している・・・状況ならばいいんですが、正直言うと仕事が回っている・・・のか?という感触です。

 まず、バカンスシーズンは教育機関や製造業、果てには官公庁まで完全に「バカンスムード」となります。つまるところ、連絡をしても「担当者はバカンス中なので現在対応ができない」と言ってくれればまだいい方で、そもそも連絡しても担当者不在につき音信不通といったことすらざらにあります。回っているか・回っていないかでいえば、多分回ってないです。

 ただ、しまいにはこの時期はそもそも連絡をする前に「どうせ先方はバカンスシーズンだし仕事振っても全然動かんでしょう」みたいな気持ちになり、その果てにはバカンスシーズンに重要な仕事を進めなければいけない状況にそもそもしない、という境地にまで達します。たとえ会社が回ってない状態だったとしても、全員が回ってない状態が当たり前だと思えば、それはもはや回っていると言える状態なのではないか、ってわけです。もはや哲学的境地。

欧州人はバカンス中に何をするの?

 欧州人のバカンスのうち、最も理想的と言われるのが「地中海・南欧リゾートでのんびりすること」と言われています。

 最近温暖化のせいでこの限りではないですが、欧州の大半は札幌よりも緯度が高いため、夏でも結構涼しいんですよね。そのため、暖かい南欧の砂浜や島に行ってビーチや船で過ごすのが人気です。他にも、山でキャンプをする、湖で過ごすといった自然の中で過ごすことをする人もいます。

 まぁ、ただこれはあくまで「理想的なバカンス」というだけであって、全ての欧州人がそんなこと夢のような旅行ができるはずもないです。そのため、バカンスとして休みは取るものの実際は、近場でキャンプやハイキングをする、親戚の家に長期間帰るなどお金のかからない過ごし方をする方も多いです。また、家庭の事情や学業の都合でそもそも長期間の休みを取ることすらしない、という人もたくさんいます。

どうにもバカンスを美化しがちな日本人?

 日本から欧州は地理的に遠いせいもあってか、どうも欧州のバカンスについては「良い面を誇張しただけの言説」がしばしば見られます。ちょうど最近、下記のようなまとめ記事を見かけました。

togetter.com

 この記事で言及しているフィンランドの過ごし方ですが、今欧州に住んでいる感覚からすれば「そういうことしている人もいないわけじゃないが、それがマジョリティーじゃない」です。仮に、外国人が「日本は5月に大きな連休があり、みんなレジャーに出かける素晴らしい文化がある」と言っていたら、「いやそういう人もいるけど全員が全員そうじゃねーよ」と突っ込むでしょう。

 バカンスシーズンについて、日本では上澄みの優雅に過ごしている人だけを切り取って誇張した言説をしばしば見かけます。それ自体嘘ではないんですが、それをほとんど全員がやれている、などと思うのは隣の芝生が青く見えているだけだと感じます。