「ヨーロッパでは家の中でも靴を履くんですか?」

文化、気候が違えば家も違うというもので、日本と西洋では家の構造が違います。

 

まずは以下の写真をご覧ください。廊下と扉があり、このまま別室へ繋がっているように見えます。

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ただの廊下と扉に見えるが・・・

と日本人なら思ってしまうのですが、実はここは玄関でして、ここから外に出られます。せっかくなので扉を開けてみます。ちなみに壁側の扉はトイレです。

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外へ出られます

靴を脱ぎ履きするスペースもなければ、下駄箱もないです。

そもそも、西洋には日本人の思う「玄関」という空間が備え付けらえた家屋があまりありません。

日本では、「家の中に靴を履いて入らない」という習慣のために、「屋内から隔絶された一段下がった空間」と「靴をしまっておく下駄箱」という外と内の境界を行き来するための領域を備え付ける必要があります。ところが、西洋家屋では家の外と内に明確な境界がなく地続きであるため、日本の家屋のような「靴を脱ぎ履きするためにだけ設けられた空間」と「出入り口付近に靴を保管しておくための家具」というものが必須ではないのです。

※捕捉

上記で「必須ではない」と書きましたが、西洋の全ての家屋に玄関的機能をもった空間がないわけではありません。実際、家によっては出入口付近に大きな下駄箱兼コート用ワードローブがある、立派な家になるとmud roomという室内に入る時に泥を落とすための空間が備え付けられた家なんかもあります。

 

さて、皆様もどこかで「西洋では家の中でも靴を脱がない」ということを聞いたことがあると思います。実際、家の機能を説明したとおり、そもそも家側に「靴を脱いで家に入る」ということを想定した構造がないのです。

じゃあもし海外の他人のお家にお呼ばれしたらそのまま靴で入っていいか、というと実のところ家にお邪魔する際に靴を脱いだ方がいいこともあります。なんのことか混乱してきたかもしれませんので解説します。

西洋社会では家の中で外履きを履いて入っていいかは「各家庭のルール」という認識です。そのため、「他人の家にお招きいただいたときのマナー」みたいな英語サイトには、「相手の家のルールに従うこと(靴を脱ぐべきかそれとも履いたままでいいか)」と書かれていることが多いです。例えば、「赤ん坊がいる家で子供がどうしても床でハイハイしちゃうから絶対に脱いで」というルールの家、「1階のゲストルームの空間は靴ありでいいけど、2階のベッドルームは脱がないとダメ」というルールの家、「家の中のどこでも靴でOK」というルールの家などがあるということです。あと、私もまだ西洋圏では1都市にしか住んだことがないため聞き及んだ範囲ではありますが、「家の中で外履きを脱ぐのが常識の地域」と「家の中で外履きを履いたままなのが常識の地域」とあったりするみたいです。

日本国内でも太平洋側と大西洋側、北国と南国で微妙にルールが変わってくるものなので、それと同じですね。ちなみに、ブラチスラバでは靴を脱いで他人の家に入るのが一般的のようで、友人やキッチンの修理工が我が家を訪問した際、特に何もこちらは指示せずとも自主的に靴を脱いでいました。

 

こう思うと、「西洋では家の中で靴を履く」というよりも、「日本の家は中に入るために靴を脱ぐことを強制する構造にある」という方が正しいのかもしれません。幼い時から家に上がる=靴を脱ぐということを当たり前にやっていたわけなのですが、見方を変えれば、日本の家はその箱の構造によって、人間に対して靴を脱ぐよう強制させている、とも言えるのかもしれません。