在外選挙制度

ちょうど日本では衆議院選挙の真っ最中。そんな時勢ですし、今日は海外からの投票の話でもしようかと思います。海外から投票の際には「在外選挙制度」を使い、お近くの大使館等で投票するか郵送で直接自治体へ投票結果を郵送するかのどちらかとなります。

在外選挙人名簿登録申請

まず、いずれの方法を取るにせよ、必ずどこかの自治体へ「在外選挙人名簿申請登録」を行わなければなりません。選挙人名簿登録自体は日本でも同じですが、海外だと色々と追加で手続きが必要になります。

www.mofa.go.jp

流れとしては以下のとおりです。

①国内市町村役場へ転出届を提出(渡航前)

②現地大使館へ書類を提出

③大使館が居住実態(3か月以上)を確認

④書類を日本の外務省へ送る

⑤市町村選管に当該用紙を郵送し手続き

⑥市町村選管が在外選挙認証(在外選挙のための証明書)を発行

※こちらも紙

⑦外務省に証明書を送付

⑧大使館に郵送

⑨個人の元へ届いて投票が可能になる

 

このとおり、選挙人名簿に登録するためにはまず3か月その国に住んだうえで、紙での往復やり取りをする必要があります。上記の紙のやり取りは2か月ほどかかるので、おおよそ半年弱その国に住まないと参政権が付与されません。私は4月末に赴任したためギリギリ投票権がありましたが、後から来た妻は今回の衆院選では事務手続きの問題で投票できないことになってしまいました。

投票方法

在外選挙人名簿に登録した人の投票方法は3つあります。

①近くの大使館・領事館へ行って投票

日本に住む有権者と同じ感覚で会場に行って投票するやり方です。

②郵送投票

実は在外選挙は郵送でも行えます。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/senkyo/pdfs/yuubintouhyou.pdf

③一時帰国して投票

在外選挙人名簿に載っていながらも、選挙期間内に登録している自治体の投票所へ行くことができる場合であれば、そこで住民と同じように投票を行うことができます。

投票する地区

投票する地区は、転出届を出した自治となります。つまり、小選挙区比例代表並立制の場合ですと、その地区に立候補した個人への1票と政党への1票というように、現地に住んでいる人と同じように投票ができます。

最高裁判所裁判官国民審査の投票ができない

選挙の際、合わせて行われることがある最高裁判所裁判官の国民審査ですが、実は在外選挙の場合は現行ルールでは投票権がありません。そのため、投じれるのは国政選挙分のみです。ちなみに、これは一時帰国して投票した人も同様のルールが適用されます。

ただし、最近「国民審査が在外でできないのは違憲!」という裁判の最高裁判決が下り、「違憲である」という判断が下されました。

www3.nhk.or.jp

今後の立法府の動き次第ですが、将来的には在外からでも最高裁判所裁判官の国民審査に参加できるようになるのかもしれません。

投票締め切りが早い

日本であれば、今回の衆院選投票日は10月31日(日)となります。今は期日前投票も充実しているため、それまでに投票すればいいのですが、在外投票の場合は(お住まいの国・地域によりますが)選挙の締め切りははるかに早いです。これは、投票用紙を本国に送付し、さらにそれを各選管に振り分けしなければならないため、締め切りが日本より早くなっているためです。

票の封印の仕方

日本であれば、各個別ブースで書いた用紙を折り曲げ、監査人の目の前で投票箱の中に投函する、というのが投票のやり方です。ただ、郵送の場合は投票内容の偽造を防ぐため、投票用紙の封筒の入れ方できっちり決まっています

www.mofa.go.jp

具体的には

①投票用紙を内封筒に入れる

②日付、在住国、投票者名、署名、選挙認証の番号を書いた外封筒に入れる

③市町村選管名、住所、郵便番号を書いた送付用封筒に入れる

というマトリョーシカ状態で投票用紙を送る必要があります。なお、大使館に投票に行けば、この辺の封筒は全て用意はしてくれます。

 

以上が在外選挙となります。海外という制約された状況ながら、なるべく他の国民と同様の条件になるよう、海外からの投票は行われます。

 

以上が在外選挙についての説明です。

で、ここから先は私見です、という前置きをしたうえで書きます。

私のように、最後に転出届を出した自治体が地元かつ長らく住んでいたことに加え、いずれ日本へ帰国することが確定している身分であれば、小選挙区立候補者の名前も聞き及んでおり、また日本の今後というものに考えが及ぶため選挙に足が向きます。しかし、出国時にたまたまその当時住んでいただけの自治体で出国届を出したり、もう日本で再定住する気がなかったりする人であれば、投票をする以前に、そもそも各党の政策は何かや誰が立候補しているかはよっぽど能動的に情報を取りにいかないと把握ができません。また、投票は基本的に近くの大使館(領事がある場合は領事館)で行うわけですが、大使館に行くまで数時間かかるような僻地に住んでいる方もいらっしゃいます。郵送の選挙も手間ですし、そもそも地域によっては郵便事情が劣悪な国もあるわけで、いかに貴重な一票、といえど自己の生活にそれほど密着しているわけではない母国の選挙に対し、多大な手間を払ってでも投票をするインセンティブがどこまでわくのか、という話になります。

そんなわけで、日本国内にお住まいの皆様は会場も近所に設置され、情報も種々の媒体で入手できるわけで、気軽に投票に行ける環境が整っているわけです。ぜひ投票には行きましょう。