緊急事態宣言の終了

緊急事態宣言、終了しました。

 

「いやいや、この前延長に加えて対象地域も追加されたじゃないですか」と思われた方、今回、ここでいう緊急事態宣言とは日本のことではなく、今私がいる国スロバキアでの話です。

 

スロバキアでは、ちょうど先日5月14日に緊急事態宣言が解除されました。

この緊急事態宣言、なんと昨年10月1日から実に7か月半も続いていたというトンデモないものでして、このヨーロッパ中央の小国がいかにコロナにより制限を受けていたかということを表しています。

 

コロナ被害

では、7か月半も緊急事態を続けざるを得なかった被害とはどのようなものなのか。数字で見てみましょう。

参考として、ロイターが公表している「COVID-19 Tracker」の数字を引用します。こちら、世界中の色々な国のコロナ被害情報というものを大変分かりやすくまとめられているサイトです。

graphics.reuters.com

コロナ被害のメルクマールとしてよく使われる新規感染者数と死亡者数は以下のとおりです(5月15日現在)。

●累積感染者数:38万7000人

●累計死亡者数:1万2200人

 

これだけ見てもピンとは来ないと思うので、普段見慣れているであろう日本の数字も合わせて掲載します。

●日本の累積感染者数:68万人

●日本の累計死亡者数:1万1500人

 

で、ここから問題になるのが日本とスロバキアの人口差です。

現在の日本の人口は約1億2630万人です。これに対して、スロバキアの人口は約545万人、つまり日本の人口の約4%です。ちなみに、北海道民だけで約528万人います。

 

つまり、この国は人口比で4%たらずの日本と死者数がほぼ同じです。

医療水準や高齢化率などで単純に比較できるわけではありませんが、仮に日本がスロバキア並みの割合の死亡者数であったとすれば国民の約0.2%、25万人くらいが死んでるになります。

 

先ほどURLを貼ったロイターの「COVID-19 Tracker」では「人口に対する総数」という項目があるのでそちらを確認すると、人口100万人あたりの死者数で換算するとスロバキアの死亡者は世界第9位です。ちなみに、スロバキアより上の国は人口の少ない超小国を除けば、ハンガリーチェコモンテネグロボスニア・ヘルツェゴビナブルガリアとほぼ近隣国です。

もちろん現在も日々被害が拡大し続けてはいるのですが、中・東欧地域というのは世界でも類を見ないほどのコロナウイルス被害を被った地域と言えるのです。

 

緊急時の禁止・制限事項

まぁこれだけ甚大な被害だったんだ、というのが分かったところで、7か月半にも及ぶ緊急事態宣言下でどんな規制が加えられていたのかというところを解説します。

なお、緊急事態宣言も最初から最後までずっと同じ禁止措置が取られていたわけではなく、時期によって対象地域・対象範囲は細かく変更されており、今回は特に厳しかった時期はこんな感じでしたよ、というところをざっくりと書いてゆきます。

外出禁止(午前5時~翌午前1時)

いきなりとんでもねー禁止令です。つまり、24時間中20時間外に出るな、ってことです。

ただし、これには一部例外が設けられていまして、通勤・ビジネス活動(テレワークができないというやむを得ない場合に限る)、生活必需品の買い出し、通院、介護、当局が許可したイベント参加、PCR検査受診、葬儀・婚礼、犬の散歩、教育機関の往復、子供の送迎、近所の散歩、屋外での個人スポーツといった、生活を維持するために必要なものは認められています。ちなみに、一番厳しい時期は通勤や子供の送迎、屋外スポーツに出るために陰性証明書又は3か月以内に発行された新型コロナウイルス感染症の治癒証明書を所持する必要あり、という制限も加えられていました。

営業の規制

上述した外出禁止が相当に苛烈だったので、店舗営業の規制も相当に厳しいんだろうなというのは容易の想像がつくでしょう。

基本的には、生活を維持するのに必要な最低限度の店舗(スーパー、薬局、銀行、通信事業者、通販、車両整備、ガソリンスタンド、タクシー、クリーニング、士業、宅配業等々)以外は営業禁止です。

映画館、劇場、博物館はもちろんのこと、飲食店もアパレルも店舗営業は不可、家電屋も通販のみです。プロスポーツイベントも当局の許可を得たうえで無観客でないとやれませんし、結婚式・葬式は許可を得たうえで6名以下で実施、という縛りがついています。もちろん、路上スペースでの飲食も禁止です。

さらには、営業する店舗にも㎡あたりの人数制限、消毒や換気、掃除徹底の義務など制限が諸々加わります。あと、変わり種規制としては一時期、「午前9時から11時は65歳以上のみ買い出し可」という規制も導入されておりました。

私がこの国に来た4月末頃はちょうど厳しい制限が緩和され始めた頃で、アパレルの営業や屋外飲食が認められ始めたため、上記の一番厳しい制限というのは体感してはおりません。ただ、前任曰く「どうせ家に引きこもらざるを得ないなら日本の方がまし」と言っていました。気の毒。

マスク着用の義務

着用が免除になる人間(特定年齢以下の子供、自閉症精神障害者、結婚式中の新郎新婦、被写体になる人、手話通訳者等)及び状況(スポーツ活動中、5m範囲に家族以外の他人がいない、職場に1人でいる等)以外、着用が義務です。ちなみにマスクの種類もFFP2規格(前回記事参照)ではないといけません。

 

このように相当に厳しい措置を、しかも強制的に行わさせられていたわけです。にもかかわらず、世界第9位相当の被害を被ってたってことはみんなこっそりパーティとかしてたんじゃないかな。

ちなみに、一度現地人に日本も今緊急事態宣言なんだよーということで日本の規制を説明しましたが、「それは緊急でもなんでもないし自由じゃん」と言われました。ごもっともです。

 

この国、旧共産主義圏であったせいか政府権限が強く、このような超強権的な手法がとれる法律が整っているんですよね。この点、緊急と言いつつお願い・要請ベースでしか規制を敷けない日本との違いが出ております。