アイスホッケー観戦記

 日本で一番人気のスポーツ、と言いますとおそらくは「野球」と答える方が多いかなーと思います。

 ではスロバキアで一番人気があるスポーツは、といえばやはり欧州らしく「サッカー」と言いたいところ(実際、サッカーもものすごく人気がありますが)ですが、それ以上に多くのスロバキア人が盛り上がるスポーツがあります。それは「アイスホッケー」です。

 アイスホッケーというとアメリカ4大スポーツの1つ、というイメージが強いかもしれませんが、実はアメリカ以外ではカナダ、ロシア、ベラルーシスウェーデンフィンランドチェコバルト三国などでもかなりの人気があります。

 そんなアイスホッケーですが、なかなか日本では見る機会がないので当地にいる間に観戦に行こうと思い立ち、先日スロバキアのプロアイスホッケーチームの試合へ行ってきました。

 スタジアムですが、「オンドレイ・ネペラ・アリーナ」と言います。これは過去にいたスロバキア人男子フィギュアスケーターの名前でして、いうなれば「羽生結弦スタジアム」みたいなもんです。会場では氷のリンクの上にド派手で大きなディスプレーが吊られておりました。日本だとこういった形状のスタジアムはあまり見ないのでちょっとテンション上がりますね。

 初めてのアイスホッケー観戦ですが大変楽しかったです。アイスホッケーは「氷上の格闘技」と言われるほどフィジカルコンタクトが激しいスポーツで、選手同士がパックを追ってそのまま壁に激突する、ゴール前で混戦になりゴールが所定の位置から吹っ飛ぶということもあるほど激しい競技です。そのため、しょっちゅう選手同士で乱闘間近の一触即発状態が起こるのですが、アイスホッケーではそういった選手同士で揉めることもある程度容認されています。基礎的なルールの予習をした程度でしたが、

 ちなみに試合は、地元チームであるHC Slovanが5-2で勝利しました。特にひいきのチームはないのですが、やはりホームチームが勝つと会場が盛り上がるので見ていて一体感がありましたね。

 

ローカル炭酸飲料Kofola

今日はスロバキア人がこよなく愛する炭酸飲料「Kofola」の話をしようと思います。Kofolaとは、ざっくりいうとコーラっぽいローカル飲料のことです。

うねうねしたボトルが特徴

 このKofolaですが誕生したのは旧チェコ・スロバキア社会主義時代です。当時、冷戦のさなかであったのでアメリカ企業産であるコカ・コーラを東側陣営の国が自由に消費することはできませんでした。そのため、チェコ・スロバキアの飲料企業がコーラっぽい飲み物を開発し国内で販売していたものが、現在でも生産・愛飲されております。ちなみに味ですが、本家のコーラと比べるとかなり薬草というか、ハーブのような味がします。最初は飲みなれない人が多いですが、何度も飲んでいくうちにクセになります。

 そんなKofolaですが、スロバキア内ではコカ・コーラよりもシェア率が高い飲み物です。まずコカ・コーラよりもはるかに安いんですよね。大体コカ・コーラの7~8割くらいの価格でして、レストランでは場合によってはKofola1杯で1ユーロ切るようなこともあります。レストランで食事する際にノンアルコールのケースだとほぼKofolaを頼みます。

 また、当地のKofolaはジョッキで出ます。これはビールと同じ方式で国内のKofolaはサーバータンクで各飲食店に供給されることが多いためです。さしずめ生Kofolaといった感じでしょうか。ジョッキで飲むKofola、美味しいんですよね。

生ビールならぬ生Kofola

余談

 チェコ・スロバキアのKofolaに限らず、欧州は各国でローカル炭酸飲料というものが多くあります。ちょっと前に日本に上陸し多くのスーパーやコンビニで売られている「オランジーナ」も実はフランスのローカル炭酸が日本に販路を拡大しただけなんですよね。こっちでもたまーーーーにオランジーナを見かけることはありますね。

 

常温の牛乳

 皆様、牛乳って飲みますか。牛乳というと飲むだけではなく料理にも使える良い食材いうことで、大体どこのご家庭の冷蔵庫にも入っていると思います。その他日本では給食で出るということで、老若男女問わずなじみのある飲み物とも言えます。もちろん、私が住んでいるスロバキアでも牛乳はありまして、スーパーマーケットに行っても大量に売られています。味もほとんど日本のものと変わりません。

 ただ、牛乳といえば「冷蔵」で「賞味期限が1~2週間弱」くらいです。スロバキアの冷蔵牛乳も大体こんなもんなのですが、実はスロバキアには別に「常温保存」タイプの牛乳というのが売っています。

スーパーの常温牛乳コーナー。見ての通り常温陳列です。

 この常温牛乳ですが、開封しない限りは概ね数か月から半年ほどの賞味期限があります(開封後は通常の牛乳と同様に冷蔵で2週間以内くらいに飲んだ方がいいらしいです)。ちなみに常温牛乳、スロバキアに限らず欧州では結構メジャーでスロバキア以外の国のスーパーでもよく見かけました。

 どうして常温でも賞味期限が長く保てるかというと、通常の牛乳は「殺菌」と言って、牛乳内に含まれている菌類を味を損なわない範囲でほぼ死滅させるため、一定温度で牛乳を熱処理した上で出荷されます。殺菌方法は色々あるらしいですが、日本だと120度~150度で2~3秒くらい処理する方法が一般的らしいです。ちなみにスロバキアの冷蔵牛乳の殺菌方法はもおおむね日本と同じようなやり方をしてるっぽいです。

 それに対して常温保存牛乳は「滅菌」処理がなされておりまして、さらに高温で処理しております。そうすると、菌が全て死に絶えるのであとは密封すれば冷蔵でなくとも長期間の保存が可能になる、というわけです。

 ただ、この滅菌牛乳も弱点がありまして、牛乳の味が殺菌のものと比べると変質します。どっちが美味しいかというのは好みの問題ではあるので何とも言えませんが、飲んだ個人的な感想としては「なんかいつもの牛乳と味が違うなぁ」という印象はありました。

 そんな牛乳ですが昨年冬の日本ではコロナの影響もあってか消費量が低迷した結果、「大量廃棄になってしまいかねない」ということで消費喚起が為されたことがありました。

www3.nhk.or.jp

 まぁ牛という生き物から生産される商品なので、簡単に需給調整ができないのは致し方ないと思います。一方、捨てるくらいなら滅菌処理すれば長持ちするんじゃねーかなー、とは思ったりはするものの、実際のところ日本国内に滅菌処理できる設備が少なかったりとか、市場のニーズ的に滅菌の味は売れないとかで、常温牛乳の日本国内での普及には色々壁があるのかもしれないですね。

交通事故の話

 本日は書こうと思っていた記事を急遽切り替えました。というのもスロバキア社会に衝撃を与える事故が起こったからです。

 10月2日の夜、スロバキアのバス停に速度超過の車が突っ込み、バスを待っていた乗客複数名にぶつかるという事故がおきました。

Four people die after car hits bus stop in Bratislava

https://spectator.sme.sk/c/23023164/four-people-die-after-car-hits-bus-stop-in-bratislava.html

 報道当初は死者が4名でしたが、後に重体の1名も亡くなったため犠牲者は5名となっています。

 この事故があったバス停なんですが、ブラチスラバ中心部の幹線道路沿い、大統領宮殿の目と鼻の先にあり利用者が多く、さらに大学寮の往復バスや地方へ行く長距離バスも多く乗り入れるバス停であったため、犠牲者のうち3名は大学生でした。

 そして、本事故の加害者であるドライバーはなんですが飲酒運転、しかも相当量の酒を飲んでいたことが判明しています。当時の事故時の映像が残っているのですが、首都中心部の幹線道路で出していいはずがない速度で人に突っ込んでいる車の様子が写っておりました。

 本件、スロバキア社会ではかなりの衝撃でありまして、次の日にチャプトヴァー大統領が現場に献花に訪れた他、ブラチスラバ旧市街プリマティア宮殿には喪章を模した黒い旗が掲げられるなど、政府要人にも大きな反応があったほどです。さすがに首都のど真ん中での飲酒運転事故、しかも若い人が複数亡くなったこともあり社会全体で動揺している様子がうかがえます。

 
 
 
 
 
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黒い旗が掲げられたプリマティア宮殿

 これはあくまで個人の感覚なのですが、当地の飲酒運転に関する意識の高さはどの程度なのかは気になります。まず、スロバキア人というかスラブ系民族ってとにかくお酒が大好きですし、あと酒にめちゃめちゃ強いんですよね。実際、この国は以前のブログにも書いたとおり水より酒の方が安いという国でありまして、屋外で朝ご飯代わりにビールとつまみをキメているおじさんおばさんというのを良く観測します。また、ビール以外にもワインや果実蒸留酒などお酒の種類も日本よりはるかに豊富で充実しております。

 あともう一つ、この国って自転車の飲酒運転は違法ではないようなんですよね。なので、サイクリングロードの脇に休憩所よろしくビール飲める飲食店ってたくさんありますし、サイクリストが休憩がてらビール飲んでいます。まぁスラブ系民族は肝臓が極東人と比べると遙かに強靱なので、ビール程度ではそんなに酔わないのかもしれません。今回の加害者の飲酒歴などは報道されていないので詳細は分からないのですが、当地の飲酒習慣は日本よりはるかに浸透しているんじゃないかなぁと過ごしていて感じます。

 とはいえ、我が国でも古くは危険運転致死罪設立の契機になったといわれる1999年の東名高速飲酒運転事故、同条文の適用を巡って社会が大もめした2006年の福岡海の中道大橋飲酒運転事故など過去にあった痛ましい事故を踏まえ、少しずつ飲酒運転撲滅に向けて社会の意識をアップデートしてきました。まだまだ飲酒運転は無くなってはおりませんが、私が生きている30余念あまりでもだいぶ飲酒運転意識は向上してきたと思います。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

 

 ただ、社会において飲酒運転撲滅のためにはこうした貴い犠牲が必要、ということであればやっぱりそれは悲しいものです。スロバキア社会でもこうした痛ましい事故が二度と起きないことを願うばかりですね。

 

【追記】

 本件の犯人ですが、当初は警察に対して威圧的な態度を取っていたそうですが、次の日にアルコールが抜けてからは警察に自殺用の拳銃を貸してほしいと懇願するほどに憔悴した状態になったとのことです。

 この男ですが、当日も朝から自宅で飲酒、職場でも飲酒をしていたということで、医学的な診断はまだ出ていないですがいわゆる「アルコール中毒」だったのでは、と見らえています。

 スロバキアで飲酒運転による事故事例としては本件が過去最悪とのことらしいです。今後、スロバキアでも飲酒運転に対する厳罰化が進むかもしれません。

こっちでは現役トラムとトロリーバス

 今日は当地の公共交通機関の話でもしようかと思います。

 まず、スロバキアの首都ブラチスラバには地下鉄がありません。まぁ人口48万人くらいしかいませんから日本でいえば中核市くらいですからね。そもそも、欧州では小国も多く首都でも人口が100万ないという国もあるので、首都とはいえ地下鉄がないこともざらにあります。

 代わりに当地の公共交通機関で使われているのはバス、それと日本ではほとんどなくなってしまった「トラム」と「トロリーバス」です。

スロバキアの旧国立劇場とトラム

ちょっと古めかしい車両も現役で走ってます

冬は冬仕様トラムが走ります

 また、ブラチスラバ以外でも欧州各都市ではトラムが走っている都市もまだまだたくさんあります。

ブダペストドナウ川沿いを走るトラム

プラハのトラム。ちなみにチェコスロバキアのトラムは車メーカーのシュコダ

クロアチアの首都、ザグレブのトラム

スイス、チューリッヒのトラム

 それから、ブラチスラバではトロリーバスも走っています。ちなみに日本でトロリーバスがあるのは「黒部峡谷」にある「関電トンネル電気バス」だけですので、日本人的にはかなりレアな乗り物と感じます。

ブラチスラバトロリーバスですが、結構な台数が走っています

 トロリーバスはトラムと比べると少ない印象ですが、欧州の地方都市なんかではまだまだ現役で使われている乗り物ですね。

ザルツブルクトロリーバス



万能野菜、パプリカ

 当地に住み始めてもう1年半、最初は慣れなかった自炊にも完全に慣れ、こっちの国の食材でガンガン色々なものを作れるようになりました。

 今日は、そんな中東欧の食卓で最も重要な野菜とまで言われている「パプリカ」について話をしようと思います。

 まず、皆様もパプリカという野菜、「見た目がピーマンに似てるけど苦くない」「見た目が赤くて唐辛子っぽいけど辛くない」「スーパーにあるのは韓国産が多い」くらいの認識はあるとは思います。とはいえ、スーパーで売ってるパプリカは輸入品故に他の野菜を比べるとちょっと割高感もあり、和食にもそこまで用いないこともあってか、そう身近な野菜ではないかと思われます。

 しかし、スロバキアではパプリカは最も身近で良く食される、と言っていいほど浸透している野菜です。

 まず、スーパーのパプリカコーナーがこんな感じです。

近所のスーパーのパプリカコーナー。写真の中のものは全部パプリカ

 パプリカと言えば赤、というイメージが日本人には強いかもしれませんが、こちらのパプリカは赤・黄・緑・白・果てには茶色のものまであります。

日本ではなかなか見ることがない色のパプリカ。ちなみに味はほぼ同じです

 そんなパプリカですが、野菜としての使い勝手は個人的には最高峰レベルだと感じています。

 まず、パプリカは大変柔らかい野菜なので、生で食べられます。そのため、こっちの国のレストランでサラダを頼むとほぼ100%パプリカが入っています。ちなみに我が家では、パプリカをチョップしたものを作り置きし、毎食のサラダに入れて食べるようにしています。

色も綺麗なのでサラダに彩りを足せます

 それから味に癖がないため、お肉料理の付け合わせとして焼いたものを添える、バーベキューで丸焼きにする、素揚げにする、煮込み料理の具材に使うなどなど、幅広い料理・調理法で扱えます。

 また、パプリカはこちらでは「香辛料」としても使います。皆様も「パプリカパウダー」という調味料は聞いたことがあるんじゃないでしょうか。例えば、「チョリソ」というスペインにある赤いソーセージの赤色は、実はパプリカパウダーの色です。

 さらに、パプリカですが「辛い」品種もあります。

スロバキア語で「Hot peppers」と書いてあります

 そもそも、パプリカというのは元々コロンブス中南米から持ち帰った唐辛子がルーツです。唐辛子の辛み成分であるカプサイシンは劣性遺伝子であるため、その後に辛みが出ないようにと品種改良して誕生した野菜こそがパプリカというわけです。このパプリカの品種改良及び大量栽培を昔からやっている国というのが隣国ハンガリーでして、その影響もあってかスロバキア含む中東欧諸国では料理にパプリカを大量に用いるのが定着したようです。そもそも、「パプリカ」という呼び方自体ハンガリー語がルーツとも言われています。

中東欧地域の頭脳流出の話

皆様こんにちは。

 今日はタイトルにある「頭脳流出」という話をしようかと思います。

 そもそも、頭脳流出ってなんぞや、ということですが、ざっくりいうと「移動の自由が認められる世界では、優秀な人材ほどもっと就労・住環境条件が良い国に出て行ってしまい、自国に優秀な人的リソースが枯渇していく」現象のことです。

 ここでいう頭脳、というのは単に学者や研究者だけを指すのではなく、医者・や弁護士・会計士などの士業、ITエンジニアなどの高等教育を必要とする職業の人間も含まれます。

詳しい情報は下記wikiを参照ください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%AD%E8%84%B3%E6%B5%81%E5%87%BA

 この辺、日本でもバブル以後に製造業を支えた優秀な企業研究者が中・韓に引き抜かれて日の丸製造業凋落の原因となっただの、日本のポスドク問題は他国と比べても深刻だの、最近ではアニメ市場・ゲーム市場で中華資本が隆盛し、日本の敏腕アニメーターやクリエーターが次々に中国に抜かれているだの、ナショナリスティックめいた煽りも添えられる話になったりします。が、中東欧が抱える頭脳流出の深刻さは日本のそれとは比になりません。

 まず、私がいるスロバキアEU加盟国ですが、EU加盟国ながらその賃金は旧西側諸国(ドイツ・オーストリア以西)の約7~8割程度と言われています。ちなみに、これでも2009年のユーロ導入後に加速度的に平均給与は跳ね上がったものの、いまだに西側より給与水準は劣っておるわけです。

 また、こちらで暮らしていると日常的に英語のみならず、フランス語・ドイツ語で書かれた製品というのを手にする機会は非常に多く、ネイティブ以外の言語に触れる機会は日本人のそれよりはるかに多いです。実際、街中でも40代以下の店員はほぼ英語ができますので、現地言語をあまり覚えようとせずに暮らす私のような不躾なガイジンも大変助かっています。

 加えて、EU域内のシェンゲン協定補正もあり、移動の障壁というのは海に囲まれた島国日本国民と比べるとものすごく低いです。

 そんなわけで、ある程度の教育水準を受けた学生が、より良い生活・より良い待遇を求めて西へ向かうというのは当然の選択になるわけでして、この若者のこの流れはそう易々と止めることはできません。早い話、今の日本で起きている若者の東京一極集中が国境をまたいで行われているということです。

 参考に、スロバキアという国は人口が500万いるのですが、一番在外スロバキア人が多い国はイギリスでして、その数は約10万人と言われています。つまりは、国民の2%が海外にいる状態であって、日本に例えれば、人口1億2000万のうち240万人、名古屋市より多い人口がアメリカに住んでいると思ってもらえればOKです(ちなみに現在の在米邦人は約万人)。この10万人が全員高度人材、とは言いませんがいかに人的リソースが外に流出しているかということを表している数字であります。ちなみに、クリスマスシーズンにはこうした在外に住んでいるスロバキア人の若者たちが故郷であるスロバキアに帰ってくるようで、日本の年末年始の帰省ラッシュと似た現象が起きます。

 こんな難儀な状況の中東欧諸国なのですが、さらに恐ろしいことにヨーロッパ全体というより大きな視点で見ると、高度人材は流出超過である、と言われています。すでに相当西欧に吸い取られているはずなのに、その西欧すらさらにアメリカやカナダ等に吸い取られているっていうのはなかなかに厳しい現実と言わざるを得ません。