パーリンカ蒸留所見学記録
さて、今日はスロバキアのものではなく、ハンガリーの「パーリンカ」について書こうと思います。
パーリンカとはハンガリーのみで作られる果物原料の蒸留酒のことです。
こういうフルーツ原料の蒸留酒は中東欧各国にあるのですが、「パーリンカ」と名乗れるのは法律上ハンガリー国内で生産されたもののみとなります(スロバキアにも同様の果実原料蒸留酒がありますが、「スリヴォヴィツァ」と呼ばれています)。ちなみにパーリンカという名前の由来はスロバキア語の「燃やす」という意味の「pálenka['paːlɛŋka](パレニカ)」から来ているそうです。
そんなパーリンカですが、私が住んでいるブラチスラバから車で1時間ほど走ったところに蒸留所がある、という情報をいただきまして。せっかくなので、ダメ元で「お宅の蒸留所、行ってもいい?」とメールしてみたところ、蒸留所の人から「●日に来ていいよ」と言われたので先日行ってきた次第です。蒸留所のおじさんはハンガリー語しかしゃべれないのですが、当日は我々のために通訳のお姉さんも同席してくれました。圧倒的ホスピタリティ。ありがとう、蒸留所のおっさん!
まず、パーリンカの材料は大量の果物です。なので、蒸留所の入り口では果物を水洗いしたのちにクラッシュする機械がガンガン動いていました。
その後、クラッシュした果実の液を攪拌して発酵できる状態にします。
そして、この果実原液を発酵庫内で7日間、15~20度の環境で置きます。この時にどんな環境でどれくらい発酵させるかがパーリンカの質の決め手になるらしいです。
そのあとは蒸留釜で発酵した液体を蒸留していきます。この蒸留所では86%まで度数を高めたパーリンカを作るそうです。
最後に、高純度に蒸留したパーリンカを真水で調整して、40%前後のアルコール飲料に仕上げたのち、梱包・ラベリングして出荷するそうです。
ちなみにこの蒸留所では、洋ナシ・プラム・ハンガリーブドウ・チェリー・ブルーベリーなど約40種類のパーリンカを作っているそうです。家族+近所の人ぐらいで成り立つ小さな蒸留所でしたが、この品数はなかなかすごいですね。
それから、蒸留所の隣には畑(約1000平米)もありました。オーナー曰く果物の品種もこだわっているらしく、良いと思った果樹をクローン栽培で増やして酒の原料を収穫しているとのことです。酒造りに並々ならぬこだわりを感じます。
あと、蒸留所の隣にはテイスティングもできる商談スペースもありました。写真のとおり色々なコンペティションで賞を取っているみたいです。
社会見学としては、異国の蒸留酒製造過程を見学する機会は希少ですので、かなり楽しかったです。せっかくなので、数本パーリンカを買って帰りました。お家で飲んでみましたが、とにかく香りが液体の中に凝縮されていて、ショットで飲むと胃からいい香りがただよってきます。なかなか日本では手に入らないお酒ですが、世界にはまだまだ日本人の知らない美味しいものがたくさんあります。
余談
このブログを読んで「パーリンカ飲んでみたい!」と思った方、実は東京都・神楽坂に日本で唯一のパーリンカ専門のバーがございます。
ちなみに、この蒸留所の情報を教えてくれた人がオーナーです。ぜひパーリンカに興味を持ったという方は一度行ってみてください。