ヨーロッパ最大の音楽コンテストEUROVISION

 日本の音楽シーンは主に日本のミュージシャンの曲「邦楽」と海外のミュージシャンの曲「洋楽」と分かれています。ただ、実際には「洋楽」といっても日本国内で流通するのは大半がアメリカのミュージシャン、次点でイギリスのミュージシャンと最近ではK-POPもあるかなという程度で、世界の音楽市場から見ると国内に流通する「洋楽」というのは実は偏りがあります。そんなせいもあってか、人口7億超、50もの国家を有するヨーロッパ圏にもそれはそれは大きな音楽市場があるのですが、日本人には知られていないミュージシャンも多いです。

 本日は、そんな日本になじみが薄いヨーロッパ音楽市場における最大のポップ音楽コンテストである「EUROVISION」について書いていきたいと思います。

そもそもEUROVISIONって何

 EUROVISIONとは「欧州放送連合」という団体が主催している年1回の音楽コンテストでして、なんと1956年から行われているという超長寿音楽番組です。

ja.wikipedia.org

開催方式、参加国、開催地

 開催方式なのですが、各国が1組代表ミュージシャンを選出し、それらが会場でパフォーマンスをしたのち各国1名ずつの審査員投票と視聴者投票で1位を決めるという、日本でいう紅白歌合戦に甲子園的な選出要素を加えたものです。優勝したアーティストの中には後に世界的な成功をした人もおり、有名どころでいけばABBAセリーヌ・ディオンなどがいます。また、もう一つ特徴としましてその年で優勝したバンドの出身国が次の開催国権利を得られるというルールがあります。

楽曲の言語

 楽曲の言語ですが、基本的に英語の曲が多いです。ただ、話者が多いスペイン語やフランス語の曲も一定数あるほか、東欧などの辺境ヨーロッパ出身国代表は自国言語での出場というのもあります。普段ほとんど聞かないようなマイナー言語の曲でも意外といいじゃん!という発見があるのもこのイベントの良さです。

EUROVISION2022開催までの色々

 今年のEUROVISION2022は、昨年の優勝がイタリアのバンドなのでイタリアのトリノで行われました。放送時間は欧州のゴールデンタイムなので、日本では深夜放送となってしまいなかなか見るのは厳しいのですが、ヨーロッパ在住民であればリアタイ視聴も余裕です。

うちのテレビではチェコの放送局が放映している映像だったせいか、
音声が全部チェコ語で何言ってるかまったくわかりませんでした・・・

 

 ただ、2月に「ウクライナのロシア侵略」があったせいで、ロシアは欧州放送連盟を脱退しており、出場が内定していたロシア代表は出場不可になったり、ウクライナ代表に内定していたミュージシャンが「占領下のクリミアを渡航」していたことが明らかになったため出場を辞退させられ、次点のミュージシャンが繰り上げ出場となったなど、開催前から地政学的動乱の影響を受けることとなりました。

EUROVISIONはyoutubeで見れる

 EUROVISIONですが、日本は欧州生放送ゆえに時差の問題で深夜視聴になってしまう、さらにはそもそも放送自体がやっていないから観られない、なんてことはございません。今の時代便利なもので、youtubeの公式アカウントが放送全部及び各アーティストのライブパフォーマンスをリアルタイムで動画投稿してくれています。

www.youtube.com

 なので、今からでも無料で全部観られます。エンターテインメント消費において、いい時代になったものです。みんな観ろ。

今年の優勝者とEUROVISIONにおける政治的影響について

 今年の優勝者はウクライナ代表のKalush Orchestraです。審査員票は第4位の192点でしたが、視聴者票が439点と圧倒的な数字を積み上げた優勝となりました。

www.youtube.com

 これに関して個人的な意見を言えば、なかなかpoliticalな結果となったなぁと思います。まぁウクライナ代表のウクライナ民族音楽とヒップホップの融合というのも面白い音楽とは感じるのですが、視聴者票が2位239点に対してほぼダブルスコアに近い獲得数積み上げてますからね。これが今の欧州民意、といえばそうかもしれません。とはいえ、音楽の完成度が低いってわけではないです。ぜひライブパフォーマンスも見てみてください。

 あと、上記したとおり優勝したミュージシャンの出身国が来年のEUROVISION開催権を得られるわけなので、来年のウクライナはこういう華やかなイベントが開催ができる状態になってるといいですねぇ。

今コンテスト出場者パフォーマンスの個人的おすすめ

 そんなわけで今年のEUROVISIONはウクライナ代表の優勝に終わったわけなのですが、ウクライナ以外にも多くの「これ良いじゃん」というパフォーマンスはたくさんあったので、いくつか紹介したいと思います。感想は完全に僕の独断と偏見と好みです。

Sam Ryder - SPACE MAN

www.youtube.com

 お前どう見ても北欧でメタルやってるだろ、みたいな見た目してますが、歌いだしから天高く突き抜けるハイトーンボーカル、美しいメロディーラインが心に刺さる素晴らしい曲です。今回のEUROVISIONでは2位でして、今情勢によるウクライナへの大量投票がなければ、今年の優勝だったかもしれないと思えるレベルです。

 ちなみにSam Ryderはすでに齢30を超えているのですが、2020年の新型コロナ感染拡大によるロックダウン後にtiktokで人気が爆発的に上がった人でありまして、そういうスターダムののし上がり方もまた2022年ならではだなと感じます。

Chanel - SoloMo

www.youtube.com

 スペインのシンガー、Chanel Terreroとダンサーチームによるパフォーマンスです。とにかく全参加者数でぶっちぎりにステージパフォーマンスが良かったですね。マライア・キャリーブリトニー・スピアーズといった、アメリカの超一線級のポップシンガーを彷彿とさせるパフォーマンスでした。

Konstrakta - In Corpore Sano

www.youtube.com

 ここからは色物枠です。

 全く聞き取れない謎言語と意味不明な手洗いパフォーマンスをしながら歌うセルビア代表のKonstraktaの曲、In Corpore Sano(健康な肉体であれ)です。まぁ歌っている言語がセルビア語+ラテン語なので、日本人にはなかなか聴き取れません。最初に聴いただけでは「なにこれぇ!?」にしかならんです。

 ちなみ歌詞や楽曲の意味というのが非常に現代の情勢にマッチしておりまして、多分中国でこの曲をやったら当局に禁止にされるレベルです。下記に英訳した歌詞と曲の意味が書いてあるので、興味のある方はご覧ください。

lyricstranslate.com

Zdob şi Zdub & Advahov Brothers - Trenulețul

www.youtube.com

 「本人たちはいたって大真面目にやっているが、こんなん笑うやん」というロックサウンドに自国の民族音楽要素入れたろ!!という辺境国のバンドにありがちな曲です。なんだよフォルクーロレロックンロールってよぉ・・・。

 とはいえ、こういうバンドを山間でやるロックフェスティバルのちょっと小さいステージで酒飲みつつウェイウェイ騒ぎながら見るとすっげー楽しいんですよね。ぜひ、朝霧jamみたいなフェスのちょっと小さなステージに来てもらってパフォーマンスしていただきたい所存です。

 ちなみに査員票がわずか14点に対し、視聴者票が239点と審査員と視聴者の得点がものすんごく乖離したバンドでして、プロが良いと思った作品が必ずしも市井で評価されるわけではない、を端的に表している楽曲でした。

ちなみにスロバキア代表は・・・

 そもそもスロバキア代表自体がいません。この国、音楽エンターテインメントビジネスがあまりに貧弱なんですよね・・・。過去振り返っても数えるほどしかEUROVISIONに出ておらず。圧倒的ポップ音楽後進国。。。

余談:去年の優勝アーティストについて

 ちなみに去年行われたEUROVISION2021はイタリアのMåneskin(モーネスキン)というロックバンドが優勝しています。昨今、ロックの商業音楽シーンにおいての凋落が言われて久しいのですが、EUROVISIONのロックバンドの優勝はかなり久々ということで大変注目を浴びました。

www.youtube.com

 Måneskinなんですが、EUROVISION優勝後に人気が爆発したミュージシャンでありまして、spotifyでも再生数は上位にランクイン、今年のサマソニで初来日が決定するなど今アツいミュージシャンです。ちなみに僕も全曲聴きました。みんな早く聴け。

 今年の優勝者決定の際の集計中にも、前回優勝者枠で新曲パフォーマンスがステージで行われました。ぶっちゃけ今年もこいつらが優勝でいいんじゃないかなという圧倒的パフォーマンスでしたね。

www.youtube.com